茅葺きの棟仕舞には、地域によって様々なタイプがある。一概には言えないが、美山のように材木が豊富な山間部では置き千木、竹が豊富な平野部なら竹簀巻きや針目覆い、などなど、気候や地域文化によって様々である。
今回の拝殿、及び杉皮葺きの本殿の棟仕舞は、お施主さんとの協議の上、主に北日本に見られる"芝棟(しばむね)"と決まった。
芝棟とは、棟に土を載せ、その重みで葺き仕舞いの茅を押さえる棟である。土という意外性はあるが、縫い留めて棟を固める針目覆いタイプに対して、重さで棟を固めるという点では、美山と同じである。土で押さえるか、重たいクリ材で押さえるか、その違いということだ。そしてその土が雨などで流出しないよう、芝などの植物を植えて、その根をもって土を固める。なんともワイルドというか、野趣溢れるというか…。
見習いの頃に初めて知った時には、全くもって理解出来ない棟仕舞だった。屋根に土を載せる??水が染み込むやん!っていうか絶対コケ生えやすいんちゃうん!? 何せ、わざわざ土を載せんでも他に何かあるやろ…。
しかし、今になって想いを巡らせれば、これほど興味深い棟もない。施工してから数年かけて出来上がっていく棟。季節、年月とともに、何が生えてくるか楽しみな棟。通常経年とともに傷んでいく他の棟に対し、この棟だけは時間をかけて育っていくのだ。
工期に追われながらの拝殿芝棟施工は、なかなか壮絶であった。初めての挑戦であり、頭の中に設計図がないから行き当たりばったり、ぶっつけ本番である。しかも、棟はただでさえ不慣れな方形。例によって「詰んだ…」と青ざめることを繰り返しながら、棟の土台が日の暮れに出来上がる。
一日も無駄に出来ない状況下で、夜から雨予報。今作業を終えるなら、屋根にシートを被せて、明日は何も出来ない。が、今日中に芝棟が大方出来上がったら、シートを掛ける必要もなく、雨降り=水遣りとなる。
考えるより早く、体が暴走した。やってしまえ。土を詰めたガラ袋は、足場下に大量に用意してある。家族の協力を得て、事前に掘り溜めておいたものだ。限界の体に鞭を打って土を足場に運び上げ、さらに屋根のてっぺんへと運ぶ。さぁ、と覚悟を決めて土を出すと、棟の勾配が急で、土が屋根面へとどんどんこぼれ落ちていこうとする!ぎゃー、こうなるのね。全身を使って土の流出を防ぎつつ、もはや口癖状態の「詰んだ…」。
どうか落ち着けと自分に言い聞かせ、慎重に体制を立て直す。対策を施して、屋根面へ土がこぼれ落ちることを防ぎながら、棟になだらかに土を盛っていく。植える植物の活力のため、出来るだけたくさんの土を積みたい。土満タンのガラ袋を抱えて、屋根面の昇り降りが続く。
もう後戻りは出来ない、ここまできたらやるところまでやってしまわねば。すっかり日が落ち暗闇に包まれ出す中、今度は芝の束を抱えて棟と地上を往復する。方形の丘状の棟に、どうやって長方形の芝を敷き詰めていく?? 頭と体を同時にフル稼働しながら、がむしゃらに、無我夢中に進める・・・。
芝を植え終え、一応の固定までが済んで、ようやく地上へ降りる。フラフラと見上げた棟は真っ暗で、もはや何も見えない。夜から降り出した雨は、植えたての芝への格好の水遣りとなり、その晩は倒れ込むように眠りに落ちたのは言うまでもない。
コメントをお書きください