vol.166 野焼き

 半月ほど遡っての話題。

 出張先から一時帰宅の週末、集落の野焼きが行われた。茅葺き職人ではなく、この日は地元の消防団員として参加。晴れ続きで空気も枯れ草も乾燥し切った上、風がやや強い。消防団としても、ある意味本番の水出し作業であり、なかなかの緊張感に包まれる。

 美山町内でも、もはや野焼きをしている集落は少ない。若手が少なくなり、農林業中心の生活文化でもなくなり、野焼きの必要性とリスクとを天秤にかけると、次第にやらなくなっていく集落が増えていくのも無理もない話なのだろう。

 

 幸いにして、野焼き文化が残されている土地で生活させてもらっているのはありがたい。数年前、隣の集落では害虫の影響で稲作に大きな被害が出た。そして自分は茅刈りをしていて、やはり虫の食害で痛い目にあうことがある。害虫駆除にどれだけの効果があるかは分からないが、少なくとも、美しい農山村の景観が維持され、山野草などの豊かな恵みが享受されるのも、こうした先人の知恵による古来からの営みが一役買っていることは間違いないと思う。

 

 やがて一面真っ黒になった大地から、チラホラと若々しい緑の新芽が顔を出す。シカたちにとっての御馳走シーズン到来だろう。