vol.223 挑戦と試練

 新たに創建する神社。昨秋に杉皮葺きの本殿螺旋段葺きの手水舎が葺き上がり、年が明け、雪に閉ざされた期間に倉庫内でお社を仕上げ、いよいよ雪解け。少しでも早く、と気が狂ったように現場の雪をかき、メインとも言える茅葺きの拝殿に取り掛かった。

 

 普段は、ボロボロになって雨漏りしかけた屋根を葺き替えるのが仕事だ。完成したあかつきには、お施主さんや見る人に、「きれいになったなぁ~。」としみじみ喜んでもらえる。ビフォーアフターが極端であればこそ、当然ながらそういう反応になる。

 ところがいざ、新築となるとなかなか怯む。イチから指示した骨組みなのだから、基本的にやりやすいはずなのだ。が、それだけにごまかしがきかない。しかも、今回はお施主さんとの話し合いにより、かなり変わった仕様になる。難易度が高い…というより、やってみないと分からない要素が多い。だが、やっぱりダメでした、と言って後戻り出来るような余裕はどこにもない。

 失敗どんとこい、挑戦を楽しんでいきましょう!そんな姿勢のお施主さんに救われ、背中を押され・・・ならば、頑張ってやってみるしかない。

 

 拝殿として荘厳ながらも、柔らかく優しく。イメージを形にしていく。イギリスの茅葺きのようなオシャレな可愛らしさをご希望されるも、日本の気候では叶わない部分があるので、日本の技術との折衷案のような形で道を探していく。

 見学に来られた方が、「そろそろ半分いったんちゃう?」と声を掛けてくれるが、あいにく2割も進んでいない。茅葺きは材料が長いから、下段を葺いているうちにも骨組みの大半が茅で隠されてしまうから、そう見えてしまうのだ。

 工期が迫っていて焦る。全体の期限はまだまだだが、屋根屋が終わらないと他の業種が取り掛かれない。自分が遅れれば皆に迷惑、しわ寄せがいってしまう。

 

 新築の厄介どころはもうひとつあった。当たり前だが、古い屋根からめくった古茅がないのだ。茅の勾配調整用ののべ茅など、"どーでもいい茅"が欲しい。が、手元にはピカピカ上質の茅しかない。しかも、この拝殿で計算上そもそも材料が足りるかどうか、始まる前からハラハラしていたのだ。こんないい茅をのべにしてしまうのは勿体ない…というか1束たりとも無駄に出来ない状況なのに…。ますます焦り、判断に誤りが出てくる。完成に至るまでに、幾度となく「あ、詰んだかも…。」と茫然、愕然とする場面に出会う。

 精神的にも体力的にもいっぱいいっぱいになって、嫌な夢に目が覚めることもしばしばになった。朝、現場で車を降りるたび、さっきまでここにいなかったっけ…という感覚に陥りだす。どうか完成まで、心よ、体よ、あと少し頑張ってくれ。

 

 そして終盤にして未知の難所、"芝棟(しばむね)"に取り掛かる。様々ないのちをテーマにした神社の、ある意味とてもシンボリック、アイコン的な存在ともいえる部分。フルスロットルのまま、クールダウンすることない無敵状態になっている頭と体で、最後の難関に挑む。