vol.216 モズのはやにえ

 茅刈りの最中、すぐ近くの木の梢から小鳥が慌てた様子で飛び立った。しばらくかがんで作業していたから、こちらの存在に気付いていなかったのか。

 あの鳥何やったかな…、知っているような知らんような。考えながら茅刈りを進めるうち、答えに出会った。

 モズだ。背の低い木の枝に、不自然にイナゴが刺さっている。"モズのはやにえ"…子どもの頃に図鑑で見た後、本物を見つけて大興奮した記憶があるやつだ。モズという小鳥は、捕まえた獲物を枝や有刺鉄線などに突き刺す習性がある。エサの乏しい冬場の保存食としてなのか、縄張り行動なのか。ともかく、面白いことをする。

 

 クマが人里を恐れず、当たり前のように山から降りてくる時代である。クマにも人間のような社会通念があるのなら、老「今どきの若グマは昔からの決まりを守らず、平気で人里に出てかなわん!」 若「いや全然行けるっすよ人里。肉とか畑の野菜とかマジうまくてヤバいっすよ。」・・・みたいな会話が行われてはいないだろうか。そんなことをよく思う。

 となるとモズも? 老「この頃の若モズははやにえをせずに全部その場で食べてしまう、なっとらん!」 若「せっかくの獲物を刺したまま忘れてるじいさんとか見ると、あれないわ~って思うよな。」・・・のようなことになっているかも。久々に目にしたはやにえを前に、そんなことを思う。

 

 モズのはやにえ、カマキリの卵、カヤネズミの巣…。腰痛を抱えつつの茅刈りはしんどいが、こんな自然との語らいは楽しい。