vol.215 久々の杉皮葺き 2

 やる気満々で開始した杉皮葺き。初っ端から難所の軒付けを迎えるが、過去の杉皮葺きメモと、茅葺きで得た経験のおかげで概ねすんなりとクリア。よし、後はひたすら単純作業の繰り返しで葺き上がっていくだけである。

 単純作業といえど、やはり天然の植物素材であるから、材料の個性はまちまちだ。厚さ薄さ、節の盛り上がり、硬い皮柔らかい皮……何も考えずに葺き進むと凸凹の目立つ屋根になったり、数年後に弱点となってしまう部分が発生してしまったりする。

 しかしそこは茅葺きで慣れもの。どうすればどうなるか、どんな手で回避するか。角の施工のややこしさも含め、茅葺きの難易度に比べれば楽勝である。

 さぁ快進撃、と思っていたのだが・・・。

 

 なかなか進まない。作業は進んでいるのだが、葺き上がる距離が進まない。当たり前であるが、茅葺きなら1段で40~50センチずつ上がるところ、杉皮葺きは1列5~6センチである。1日頑張っても、あまり進んだ気がしない。勤めていた頃は弟弟子たちと数人で掛かっていたこともあり、1人でのスピード感が頭の中に培われていない。先行して作業する大工さんに、すぐ棟まで行ってしまうよと急かしたのに、全然まだまだでしたと恥かしい思い…。

 

 そして不可思議だったのが材料計算。屋根の厚みや1列ごとに葺き進む距離は概ね一定に揃えることができ、その辺りがアバウトな茅葺きに比べて、遥かに精度の高い材料見積りが出来ていたはずだった。初めてのことゆえ、何度も確認して計算したつもりだったのだが。

 予想していた材料をかなりオーバーした。幸い在庫はあったからよかったものの、危なかった。なぜ?? 新築であるがゆえ、古い屋根を解体する(=古い屋根の面積を参考にする)という工程を経ていない。それで何か大間違いをしていたのか?? はたまた、杉皮1束でどれだけの屋根が葺けるか、そういった計算の読みが甘かったか。

 

 これも良い経験材料。手痛い事態となってしまったが、次に活かせばいい。ただ、こうした作業経過を書きまとめて考察、次回への仮説・提言をまとめる、という作業はなかなかエネルギーを使うんよな…と溜め息。それも、時間が経つと忘れてしまうから、あまり先延ばしに出来ない。未来の自分が、絶対書き残しておけ!と叫んでいるのは聞こえる気がするが。

 

 杉皮葺きはこれでいったんおしまい。棟の仕舞いは来年に持ち越し。気分転換を経て、次は本職の茅葺き師に戻る。