vol.214 久々の杉皮葺き

 お施主様の生活がかかった屋根を触らせてもらっている身でこんな表現をすると語弊があるが、まことに奥が深いとは思いつつも、毎日茅葺きをやっていれば、正直さすがに飽きもする。

 そんなわけで、今回の仕事は久々のワクワク。早く取り掛かりたいとウズウズ、モチベーション全開で始まった。

 

 杉皮葺き。文字通り、杉の樹皮で屋根を葺く。材木としての杉の副産物である皮を利用した、茅葺き同様、古くからある植物性屋根である。

 よく混同されがちだが、清水寺などで有名な檜皮(ひわだ)葺き、とは違う。スギの樹皮かヒノキの樹皮か、という違いはもちろんだが、屋根材として使用する際の樹皮の加工状態や厚み、施工法など、いろいろと違いがある。

 ザックリとしたイメージで分けるなら、杉皮葺きは簡素で庶民的な屋根、檜皮葺きは寺社仏閣などで用いられる高価で荘厳な屋根、というところか。

 その杉皮葺きも、これという決まった形があるわけではない(と思っているが)。しっかり屋根としての機能を持たせるか、ちょっとした小さな門や看板の屋根の化粧材程度に用いられるかなど、様々である。

 

 杉皮葺きは数年ぶり。ぶんなとして自社で請ける仕事としては初だ。こんな時、希少なチャンスを無駄にしまいと、丁寧な記録ノートや画像を残しておいた過去の自分に大感謝。これならやれる。当時の失敗談も、今日まで茅葺きで蓄積した経験も全て合わせて、今ならより洗練された杉皮葺きが出来るはず。何より、たまには茅葺きと違う屋根をやってみるのも気分的に新鮮でいい。

 

 そんなわけで、前のめりで始まった久々の杉皮葺き。が、始めてみるとやはりいろいろある。続きは続編にて。