
ようやく一面の工事が終了。反対側、最後の面の工事に移る。
古い茅を解体し終え、下地の補修を始める。反対面の時は前回葺き替え時の見習いっぽい仕事のツケ払いに苦労したので、こちらはせめてと期待していたのだが…。
屋根裏から覗いた感じ、丁寧な仕事がしてあるかと思いきや、残念、こちらも似たり寄ったりだった。凸凹な下地のまま、五寸釘だけは丁寧に打ちまくっているのでタチが悪い。バールで片っ端からクギを抜かないと、こちらの思い通りの仕事が始められない。
さらに追い打ちをかけるのは、竹の傷み具合だ。骨組みの竹は、基本的には状態のいいものは可能な限り再利用している。
新品の竹代を惜しんで、という気持ちもなくはないが、経験上の理由があるのだ。竹という材は、古いものは脆く、新しいものは丈夫、という考え方が当てはまらない。長年の使用を経て、"生き残っている竹"はいつまでも丈夫なのだ。逆にいかに旬の時期に伐った新品の竹でも、十数年後も丈夫なままとは限らない。
切り旬の悪かった竹は、年を経て頼りないスカスカの竹になり、またカミキリなどの虫にやられて、粉をふいてモロモロぼそぼそになってしまう。この切り旬というものも、近年では気候変動の影響なのか、竹屋さんでも読み切れないというか、あまり当てにならなくなっているそうだ。
今回の屋根面の竹は、9割方ボロボロだ。縄を切った途端にぼろっと崩れ、粉を吐きながら千切れていく。再利用出来る率が極めて低い。厄介な事態だ。こんな時のため、再利用不可の現場で出た、状態のいい古い竹のストックがあるから、それらを持ち出して何とかしのぐ。
こんな脆い竹の上に重たい茅屋根が載っていて、よく平気だったものだ、と思う。もっとも、施工した時は竹も"まだ"丈夫だったのだろうが…。大工さんが木材を相手にする時もそうだろうが、天然素材の目利きは奥が深く、なかなかに難しい。
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