vol.195 屋根裏の茅降ろし

 今回の現場は差し茅。家の屋根裏に刈り溜められた茅を使わせてもらい、屋根2面及びその他傷んだ箇所の修繕。応急処置ではない本格的な差し茅は久々かも知れない。葺き替えに比べ、差し茅はシート養生の手間も最低限で済むので、何となく気が楽でいい。

 

 打ち合わせ・下見に来た時に屋根裏の茅を見せてもらい、これはたぶん足らんやろな…と思った。家の茅を使わせてもらうということは、材料の積み下ろしや搬入作業を端折ることが出来るので、楽と言えば楽だ。しかし、数読みがしにくいという点で厄介でもある。いつもなら、必要なだけ倉庫から茅を持ってきて、作業終盤はその量を微調整すればいい。しかし、今現在ご家族で生活している家の屋根裏から茅を降ろすとなると、なかなかに大ごとである。土間にシートを張り巡らし、辺りも人間も茅クズまみれになりながらの茅降ろし作業だ。何度も出来る作業ではない。

 だからある意味、足りないと思える量は幸いともいえる。全部降ろすべしと決められるからだ。

 屋根裏から茅を運び出し、土間に投げ降ろし、外へと運んで足場上へ載せられるだけ載せる。載り切らない分は近くに積む。1日掛かりの作業である。

 茅葺き職人なら誰もが似た経験があろうが、屋根裏に山と積まれた茅が実際のところどれくらいなのか、なかなか分かりづらい。たくさんあると思ったら、埋もれた家財道具の上に茅が積まれていただけだったり、下半分は稲わらでした何て言うこともしばしばである。

 今回は逆パターン。出せども出せども茅が減らない。"思ったよりたくさんあった"パターンである。6~7束がひとつにまとめられた大きな茅束を土間にドサッ、ドサッと投げ降ろすたびに、だんだん不安になってくる。ホントに全部降ろしていいんだろうな? 後で大量の余りを屋根裏に上げねばならない何てことになったりは…。

 覚悟を決め、全ての茅を降ろして、屋根裏、土間、外…とひたすら掃除。心も体もヘトヘトになりつつ、茅の山を見上げる。いい加減なもので、これだけ不安になっていても、使い出したら今度はやっぱり足りないかもなんて思ったりするのである・・・。

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コメント: 2
  • #1

    杉原バーバラ (金曜日, 11 10月 2024 09:17)

    茅くずの掃除…掃けば掃くほど湧いてくる厄介物。五箇山の現場でよくやりましたよ。同情します。

  • #2

    ぶんな (金曜日, 11 10月 2024 20:37)

    バーバラさんありがとうございます。今回はこれでもかとブルーシート敷き回ったので、だいぶ掃除しやすいです。