vol.185 急いては事を仕損じる

 やらかした。この忙しく頭パンパンな時に限って、普段しないようなミスを……と悔いるが、時すでに遅し。腹をくくって次に活かすしかない。

 

 来年葺き替え予定の現場だが、すでに骨組みが露出しかかっているほど屋根が薄く、この冬の降雪の量によっては屋根が耐えられないかも知れない。雪が降る前に最低限の防護処置をしておきたかった。

 年明けからは出張が続きそうであり、そもそも明日からも短期の出張。だからこの応急処置は何としても今日中に終わらせねばならない。来年葺き替える屋根なのだから、無駄に手をかける必要はない。前日に6~7割方済ませ、今日は残りと撤収作業。昼前には修繕作業を終え、午後から刈り込みに入った。想定通り。時間は充分余裕がある。

 が、それでも気の焦りが不注意を呼んだ。刈り込みによる茅クズやコケが軒付近に蓄積し、電線から屋根に向かって伸びているケーブルのうち1本を隠していた。不自然な感触が腕に伝わり、茅とともに細いケーブルを切ってしまった。

 

 昨日から、このケーブルは危ないから気を付けろと何度も言い聞かせていたではないか…!ここに来てなぜ厄介事を増やしてくれるんだ…!自分で自分に憤る。撤収の一歩手前まで来ていたのに…。黙っていても余計なストレスを抱えるだけ。潔くお施主さんに事情を話してお詫び。

 落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせながら仕事していた時点で、全然落ち着けていないのだろう。いいペースで修繕をこなせたのに、一気に意気消沈である。

 

 同時に、少し冷静になる。こなせていないタスクに追われて焦っているのは事実であるが、無駄に慌ててはいまいか? ~せねば、と自分を縛り付け過ぎてはいないか?

 なんでこうもいろんな問題が重なってしまうかな、と頭を抱えるが、ものは考えようである。怪我する事故でなくてよかった。居住している家屋でなくてよかった。万一の保険を備えておいてよかった。知らんぷりせず、正直に報告出来る自分でよかった。…そう考えれば、今日という日はラッキーデイなのかも知れない。

 

 何やかや気の焦りが止むことはないが、それでも着実にひとつひとつ、年内の宿題は済ませつつある。今足りないのはたぶん、物理的な時間ではなく、ちょっと気を抜いてまぁいっかと開き直る、心の遊びを持つこと。落ち着け落ち着けと焦らずに、まあ一服しいやとリセットする時間を敢えて持つこと。

 『ぶんなの日記』なんぞ書いてる場合じゃない!と言っている自分に、こうやって吐き出すとちょっとは冷静になるもんやで。と言い聞かせつつ、甘いものとコーヒーで一服中。