vol.184 ウラジロの採取

 年内に予定されていた大きめの工事をひととおり終え、茅葺き ぶんなは恒例の冬ごもり期間に突入。気候とともに経営も氷河期を迎えるが、ちょっと冬越しのための蓄えが足りない。どーすんねんと焦る気持ちを抱えても、季節は待ってくれない。今やらねばならないことをまずは最優先。

 

 茅刈りと並行して、冬は藁細工仕事の季節。収入がなくて途方に暮れていた頃、文字通り藁をも掴む想いで始めた仕事だから、手間暇に比べて稼ぎは微々たるものである。けれど、大事にしていきたいぶんなのカラーでもあるから、財布が寂しくても、"目指せ藁しべ長者"である。

 

 晴れた日は茅刈り、雨の日は藁仕事、時々屋根仕事、が冬の仕事スタイル。先日は前々から雨予報。ボチボチそのタイミングと思い、しめ飾りに欠かせないパーツの"ウラジロ"の採取へ。

 ウラジロは、いわゆるシダ植物。左右ほぼ対象の葉を広げ、裏が他のシダ植物に比べて銀白色。

 ⇒・裏も白い→腹黒い、の反対

 ⇒・左右対称の白い裏葉→夫婦ともに白髪の生えるまで

 etc…

 ・・・お正月関連の縁起物は、飾り物であれ食材であれ、由来を探るとなかなか面白い。語呂合わせのものが多いが、わりと単純で親しみがわきやすい。

 ウラジロと双璧をなす縁起物植物が"ユズリハ"。こちらは美山に暮らしている以上、ひとつも珍しくない。その気になって探せばすぐに大量に手に入る。

 しかしウラジロは手強い。あるにはある。車を走らせていても、そこかしこで目に入る。

 しかし、葉に欠損部がなく、大きさがちょうどよく、まとまった数が揃う・・・となると、途端に貴重価値が高くなる。そして生えている場所は決まって、地肌むき出しのような急斜面…というか崖である。いいウラジロを見つけても採れなければ意味がない。そして、どこにでもあるようで、探すとなかなか見つからないものなのである。

 たぶん藁細工に通じている人間は、この時期皆、目にウラジロセンサーを装着しているだろうと思う。少々遠出して、許可を得た場所でまとまった数を採取する。

 

 少々異業種になるこの時期なのに、追いかけるのは結局ススキ、ワラ、ウラジロ、ユズリハ・・・植物ばっかり。春の山菜採り、秋の木の実採りも癒しの時間。自分の属性を測るなら、きっと草職系だろうと思うこの頃。