vol.183 ギリギリを攻める

 短期決戦の現場が終わりを迎える。ホッと安心するとともに、張り詰めていた気が抜けてドッと脱力する。

 今回の現場は、小さい上に針受けが出来ない屋根のため、最初から最後まで先読みが重要な意味を持つ現場だった。後任せの適当な進め方では、取り返しのつかない失敗を生む。かといって安全策を展開し過ぎると、手間と時間、資材を無駄に消耗する。

 結果論に過ぎないが、今回は、作業の勘が冴えていたと思う。具体的に何がと説明するのは難しいが、たぶんこれでうまくいくと判断したものを信じて、その1点に絞って作業をどんどん進めていく。途中、"いや、これは後々まずくないか…"と何度もヒヤヒヤとした。そのたび、いや、過去の現場でも大抵そう心配しつつもうまくいった、と自分の背中を押す。

 結果的に、本当に紙一重…ギリギリだった。けれどもこういった判断は、成功してさえいれば、ギリギリなほどよいのだ。ギリギリで失敗に転んだ場合は、ただの大失敗なのだが。

 そんなこんなで、ホッと安心、ドッと脱力、である。

 

 足場を解体し掃除を進めていると、たくさん声を掛けられる。褒められる、喜んでもらえることは、いくつになっても嬉しい。必死になって頑張った甲斐があったと思える。

 頭の中は次の業務のことですでにいっぱいだし、経営も恥ずかしながらいつも火の車である。それでもこうして、人の笑顔で報われる。そんな仕事をしていられることは、素直に幸せだと思う。