vol.181 痛恨

 接触がおかしく調子が悪い、ぼちぼち対策を考えねばならないな…と思いながらもズルズルと使い続けていた外付けのハードディスクが、突然機能しなくなった。相変わらず読み込みが遅いな…などと待つも、それ以降データが読み出せることはついになかった。

 中に収めていたのは、茅葺き職人になってから全ての現場の写真。ひと現場ごとに数十~数百もの画像があり、それが約15年分。

 自分は写真に収めたりメモを残したりはキッチリしても、肝心の記憶力は弱い方だ。だから常に、メモを残していたはず、あの時の画像を見れば何か分かるはず、と振り返りながら、今まで仕事をこなしてきた。今回も、そうやって過去の仕事を振り返り、翌日の作業の作戦を練ろうとしていたのだ。

 

 いろいろ調べ、自分に出来そうな手は試してみたつもりだが、機能が復旧することはなかった。マズい、これはたぶんすごくマズい。ハードディスクのデータ復旧修理はとんでもない費用が掛かると聞いたことがある。新しいHDDを買い直すくらいは何でもないが、15年近くに及ぶ記録写真が失われるのは致命的だ。

 

 足掻くのを諦めて結果的に修理に出し、全てのデータは無事に戻った。覚悟していた費用のはるか上空を行く見積り額に、声を上げてのけぞった。仕事が藁細工と茅刈りメインになるこれからのシーズン。精神的には比較的穏やかに過ごせる時期ながら、経営的には例年氷河期である。

 今年は、いつもよりちょっとだけ、お金に余裕のある冬越しが出来ると見込んでいたのだが、一気に氷河期に戻されてしまった。泣きたくても涙まで凍り付く。

 

 突然機能しなくなった、のは感覚的にそう思っただけで、上記の通り前々からおかしかったのだ。前兆はあった。それをないがしろにしたことが悔やまれる。いや、悔やむより今すべきは大事なデータの保存やバックアップの手段を、より現代的で間違いない手段に切り替えて対策することだろう。

 

 失敗も全て、今より良くしていくための糧にするしかない。そう思うにしても、痛恨の極み。あまりにも高くついた授業料だった・・・。