vol.175 最短ルート

 短期決戦と銘打っていた現場がどうにか片付いた。帰宅するやいなや、地元での用事や仕事の段取りに大わらわ。一段落した今、ようやくドッと疲れが…。しかし、同時にひと安心。週明けからまた出張先に戻らねば、なんてことにならずに済んだのはありがたい。

 

 いい意味で予報が外れないか期待していたのだが、あいにく本当に雨ばかりだった。不幸中の幸い、一日中降ったりやんだりという天気ばかりだったので、雨雲の隙間をぬって、どうにか屋根を直せたという形だ。

 

 現場からの帰りの車内で、ボンヤリ考えた。無事終えたとはいえ、最終日までギリギリだった。我ながらあの絶望的な天気予報の中で、よく終わらせられたと思う。

 では晴天続きであったら、1日くらい余裕をもって終われただろうか。そう考えた時、それもどうだったか……と首を傾げる。連日の雨の中、現場を何とか終わらせるため、不可能を可能にするため、体はもちろん、脳内もフル回転させながら仕事をこなした。雨に降られ続けたとはいえ、何も出来ずに途方に暮れていた時間はない。晴れているうちに進める部分と、雨でも出来る部分を行ったり来たりしながら、1日1日をどうにか無駄なく過ごした。

 つまりは、今の自分に考え得る限りの最短ルートで、どうにか完了まで漕ぎつけたのだ。それで雑になってしまってはいけないが、予定していた工程は終えられた。

 晴れ続きで、序盤から焦燥感に駆られることなく仕事していたら、或いは間に合っていなかったかも知れない。そんな気もした。

 

 与えられた難題をクリアすることで、スキルの幅を広げ、今までより段取り良く仕事をこなせるようになる。そんなステップアップの現場だったととらえよう。むやみに焦るのは良くないが、無駄のない動きが自然に身についている、そんな職人でありたいと思う。