屋根の仕上げ作業はなかなかしんどい。場所によって屋根を叩いたり引っ張り出したり、茅を差したり。毎日淡々と葺き上がってきた屋根の答え合わせ、採点を行なっているような時間。完成の見た目を左右するだけに、体力とともに大変な気を遣う作業である。
気力も体力も消耗する一方で、苦労して葺き上がってきた屋根を一段ずつ仕上げて降りていく時間は、清々しくもある。現場が始まってから今に至るまでの辛かった、楽しかった思い出が頭をめぐる。茅が足りないかもと青くなった時あったなぁ、茅積んだトラックが泥にはまってワイワイしたなぁ…そんなことを振り返りながら、しみじみと屋根を完成させていく。
日が暮れてくると、刈り込みを済ませゴミを落とした茅葺き屋根は、茅の油分が斜陽を反射してキラリと輝く。こればかりは写真では伝え切れない。その場でふと気付いた瞬間、思わずうっとり眺めてしまう美しさだ。これもまた、そこに至るまでの苦労や思い出があればこそ、ひときわしみじみと感じるのだろう。
黄昏時、今日という日がもう終わるという感覚とともに、この現場も終盤に差し掛かったな・・・という想いに浸りながらキラキラと輝く屋根を眺める。郷愁というか何というか。不思議な気持ちを誘う。
さぁ、浸ってばかりもいられない。工期の方もとっくに黄昏時である。寒波がどうしたと言っていたはずが、気付けばとっくに春の陽気。願わくば満開の桜を愛でながら、完成した屋根を気兼ねなく眺めて浸りたいものだ。
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正人 福田 (木曜日, 16 3月 2023 09:04)
技術の伝承が大切ですね。
ぶんな (木曜日, 16 3月 2023 20:39)
福田正人 さん
ありがとうございます。私もいずれは次にバトンを渡さねば…と思います。