vol.155 しばしの現実離れ

 今年中に予定していた大きな工事は終わり、あとは細かな修繕や応急処置などを残すのみとなった。雪が降るまであとわずか。今年はスタートが大幅に出遅れてしまったが、年中行事の茅刈りを開始した。

 数日間一人でひらすら茅を刈り続ける毎日。どこまでも単調な作業の繰り返し。耐えられない人には耐えられないだろうが、自分はこの一人黙々と動いている茅刈りの時間が好きだ。多人数で和気あいあいとやるのは嫌いではないけれど、あまり得意でもない。

 今年は1月から12月まで、本当に忙しかった。前の年から乗り越えられるか不安でいたから、心理的に厳しい期間が余計に長く感じた。ありがたいことではあるけれど、来年もおそらく忙しい。茅他の資材の確保も、工期や人員の確保も、目処が立っていないものばかり。考え出すとパニックを起こしそうになる。

 だからというのも変だが、1年に2週間程度のこの茅刈りシーズンだけは、頭をからっぽにただただ体だけを動かし続ける。肉体的にはガタガタだけれど、心理的には癒しの期間。次第に増えていく茅立ての山をニヤニヤと数えながら、どこでどんな風に使おうかな…と考えたりする。

 ご近所の依頼で、今年は植えたての果樹の雪除け代わりにも茅を立てた。畑の隅に茅が干してあるやや不思議な光景。雪が降るまでにたくさん刈らねば…と慌てる一方、たまにはこんな呑気な遊び心も楽しい。朝採れのブロッコリーを頂いて引き上げた。

 

 雪が降れば出張シーズンが始まる。遠方での仕事と厳しい冬を迎える前の哀愁も相まって、束の間の茅刈りシーズンは、独特の郷愁のような気持ちを誘うのだ。