vol.154 台風の爪痕 2

 屋根面の茅がずり落ちてしまった前回のお家に対して、こちらは台風で棟の部材が飛んでしまったお家。経年劣化で棟の重しが効かなくなると、しばしばこういうことが起こる。

 屋根面に穴が開くのと違って、即座に雨漏りが発生することは基本的にない。が、もちろん放っておいていいはずもない。じわじわと水は内部へ浸透していくし、要するに本来露出してはいけない部分が露出してしまっているのだ。塞ぐなり新たに積み直すなりしなければいけない。

 どのみち屋根の他の部分も、遅かれ早かれ修理しなくてはいけない状態。棟だけ立派に直しても仕方ないので、今回は簡易的な補修を行うに留めた。

 お施主さんご家族の、「ホントに茅葺きやめたい…」という溜め息交じりのつぶやきが心に響く。このまま維持していくにも、いっそ他の屋根に変えてしまうにも、何せお金がかかる。例えば一生懸命働いて、数年掛かりでようやく貯めた貯金。それを家族の思い出に、もしくは自分の趣味に…と使えたら幸せだろうに、どうして我が家は全て屋根の維持に消えてしまうのか…なんて思い始めたら、確かにやり切れない。あまりに切ない。しかも外部の人からは、「茅葺きって素晴らしいですよね」などと悪意なく言われることも珍しくないだろう。ますますやり切れない。

 なるべく費用をかけずに…とこちらも努力はするけれど、職人とて生活が懸かっているからそれも限界があるし、そもそも根本的な解決にはなっていない。

 結(ゆい)であったり物々交換であったり、何かお金だけに頼らない昔のようなコミュニティの仕組みがあればいいのに・・・と漠然と思うけれど、どうだか。現実問題なかなか難しい。けれどいつまでも先送りに出来ない、何とかしていかなくてはいけない課題。