vol.153 台風の爪痕

 台風の話も今更な季節になってしまったが。

 恐れたほどではなかった・・・にせよ、今年の台風は久々に強烈だった。茅葺きのお客さんからも、何件かSOSが届いた。応急対応だけして堪えてもらっていたお家がたくさん。それらを1軒1軒、解決して回らなければいけない。

 

 気付いたら押し入れの中でひどく雨漏りが発生していたので、何とか対応してもらえないかという依頼。

 家の立ち位置の関係で、屋根の様子が下からは分からないという家もしばしばある。梯子をかけて登ってみて、唖然とする。部分的に屋根の骨組みがむき出しになってしまっている。もともと傷んで寿命が近かった屋根に、台風の豪雨がとどめとなって、茅がごっそりずり落ちてしまったのだろう。

 差し茅をしようにも、何もないところに茅はさせない。葺き替えるしかないが、時間も予算もない。ので、短く加工した茅を用いて、局所的にごく薄く葺き直す方法を用いた。仮にも葺き替えなので見た目はきれいだが、厚さは20cm前後しかないだろう。当然寿命は短いが、どのみち他の部分が先に寿命を迎えるから、とりあえずならこれで充分なはず。

 

 1軒片付いた。さぁ次は…と考えるのは、なかなかしんどい。最低限の処置、というのは職人にとって気楽なようで、予算の都合上1~2日間で決着をつけねばならないことが多いから、頭も体もフル回転である。

 けれど一方で、数ヶ月掛かりの文化財工事のようなものを行えるような会社としての体力も、職人としても技術力も、うちには足りない。ならばせめて、小さな声を拾える存在ではありたい。大学病院のような研究力、チーム力はないけれど、町医者的な気安さは大事にしたい。

 こうした出番こそ、自分のポジションであり、原点。そう思って頑張ろう。