vol.133 冬ごもり、引きこもり

 茅葺き ぶんなの大きめの屋根仕事は、秋の半ばで一旦営業終了。それから年内にかけては、数日で終わるような小規模な修繕以外は、屋根に登る仕事は基本的に入れていない。だからといってもちろん遊んでいる暇はない。

 秋が過ぎるとわら細工関係の仕事が始まる。秋が深まれば茅刈りが始まる。雪が降れば茅刈りは終わり。再びわら細工、今度はお正月飾り関係がメインになってくる。

 合間に小規模な屋根の修繕、及び来年着手予定の現場の打ち合わせや準備、営業、などなど。茅刈り以外は大して体を使わない仕事。けれど、この時期の準備で来年の動きが変わってくると思うと、頭はフル回転。年末の実態のない慌ただしさを加えて、どうにも頭の中がむやみに忙しくなる時期。体を酷使している茅刈りデーの方が精神的には楽なくらいだ。

 今年はわら細工関係の仕事が多い。多いといっても茅葺きの本業に比べて、収入的にはかなり厳しい。けれど、仲間とワイワイしながら藁をいじったりするのも楽しいし、在宅で家族に見守られながら縄を綯い続けたりするのも、それはそれで貴重な時間。何とか、今後も両立していきたい。

 そして茅刈り。ハッキリ言って、茅は全て仕入れて、自分は屋根を葺き続けている方が経営的にはいい。無収入の茅刈り期間をどうやり過ごすかは毎年悩みの種だ。

 しかし、自分の住んでいる土地で茅刈りを続ける意義は、決して小さくないと思う。茅刈りに気付いて散歩の歩みを止め、思い出話にふけるおじいさんおばあさんは少なくない。興味を持って話しかけてくれる人もいる。だんだんと増えていく干場の茅の山を、景観として懐かしんで喜んでくれる人もいる。使えるならうちの茅場も自由に刈ってくれと、ほとんど話をしたこともなかった集落の人と、会話が生まれたりもする。数年地道に続けて、少しずつ芽生え始めた手応え。

 経営的に赤字期間であったとしても、自分のおこないによって、ごく、ほんの少しだけでも、地域が活性化した、そう思えたら万々歳ではないか。

 

 そんなこんなで、晴れの日には茅刈り、雨の日にはわら細工、そんな日々がしばし続く。出張の多い茅葺き職人にとって、それはある意味贅沢な日々であるかも知れないと思う。

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コメント: 2
  • #1

    中野 誠 (火曜日, 23 11月 2021)

    さすが!素晴らしいデス!お金より大切な心の富を持ってますね。。私もやっとその方が幸せだと気づいてきました。しめ縄はじめ、今後とも宜しくお願いします�有難う

  • #2

    ぶんな (火曜日, 23 11月 2021 20:32)

    ありがとうございます!しめ縄を通じて得た師匠や仲間たちとのご縁も、これからの人生の大きな財産だと思っています。