お客さんとの打ち合わせついでに、以前施工した近くの別の現場へと立ち寄った。何年やっていても、自分が葺いた屋根を改めて見に行くのはドキドキハラハラする。茅が抜け落ちていないかな、変な傷み方していないかな? 思い返せば苦い思いをした現場もある。だから余計に緊張する。
幸い、いや当たり前にそうでなくてはいけないのだが、葺いた同時より全体に色が落ち着いた屋根は、美しく柔らかい茅葺きの貫録をもって、しっかりと家を守っていた。胸を撫で下ろす心境。"ウチの子が迷惑かけていませんか?" ・・・そんな心境に近いかも?知れない。
突然お伺いしたにもかかわらず、お施主さんが喜んで迎えて下さるのが嬉しい。その節はお世話になりましたのご挨拶、お互いの近況報告、葺き替えしていた当時のあれやこれやの思い出話…。それまでの小さな心配は吹っ飛んで、この笑顔のためにこれからも頑張らねばという気持ちになる。
雨漏りの心配をしなくてよくなった屋根。普通なら当たり前のようなことが、茅葺きのお施主さんにとっては幸せなのだ。自分は外から屋根を見て安心していたけれど、お施主さんは内側から屋根の安心を感じるのだな。そんなことを思った。
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