vol.126 地産地消

 毎年あちこちに勝手に生えてくるススキや竹、そういったもので作られているのが茅葺き。材料はいくらでも手に入りそうなもの。しかし現実はそうでもない。今時、お施主さんが材料を揃えて待っていることはごく稀。そして我々職人にしても、茅や竹を遠方から仕入れて使っているのが多くの形態であると思う。

 だから、今回の現場は素朴であり、そしてある意味贅沢だ。

 

 激しく傷んだところだけ直して、当面雨漏りしなければよい…といった要望。お施主さんも「傷んどるトコにちょこっと(茅を)差してくれたらそれでええでー。」と言ってくれた。出来ればそうしたい。しかし、痛みの激しいところは、コケをめくったら室内が見えるくらいの状態。軒はもはや溶けた藁がぶら下がっているだけ。

 ちょこっと差す、にしても、差す相手がいない。ご家族と相談の上、ごく薄く葺き直し、厚みが残っている辺りで古い屋根とつなげる工法を選んだ。

 

 茅は、秋から冬に自分で茅刈りしたもの、及びお施主さんが昔刈ってストックしていたもの。

 軒で使う藁は、美山産の有機栽培の麦わらと稲わら。

 全てではないけれど、竹も茅刈りと同じ時期に伐っておいたもの。

 かき集めても、大きな屋根を葺くには足りない。けれど、こうした小規模な工事ならどうにかそれで賄える。だから今年はこちらの屋根に、それら手間暇のかかった愛着のある材料を嫁入りさせることにした。

 自分が刈った茅だけに、使い勝手はどうかとハラハラする。初年度に刈った茅は、使う時になっていろんな問題が発覚して愕然とした。が、その反省を踏まえた今年のものは大丈夫そうだ。麦わらも稲わらも、育てた人の顔が分かる。ささやかながら、嬉しいことだ。

 

 ここから古い屋根につなげていく。技術的に難しい局面。また、やり出せばキリがない中でどこまで直すか、判断のしどころ。