vol.116 嬉しいひととき

 完成した屋根を見て、自分で美しいと思える瞬間は幸せ。茅葺き屋根独特の、シャープでもどこか柔らかい雰囲気。作業が全て完了して足場もバラして、最後に下から見上げた時でないと見た目の本当の良し悪しは分からないから、最後までドキドキである。

 正直な話、下から見上げてみて「(あちゃ~)」と心の中で唸る現場だって少なくない。それでも次に活かすために、答え合わせは必ずしなくちゃいけない。

 

 とにかく、これでひと区切り。こんなにきれいになると思っていませんでした、と言って下さるお施主さんの言葉が嬉しい。忙しさに心と体が悲鳴を上げていた3月以降の各現場の情景が、ついつい頭に思い浮かぶ。本当にしんどかった。よく頑張った。不可抗力だったとはいえ、やっぱり働き過ぎは良くない・・・。"頑張った自分へのご褒美"という名目で、大して必要もないのにコンビニに寄る率が高くなる。ご褒美漬けになって出費がかさむ。

 そして、普段ならすぐ治るはずの体の痛みが治らない。負荷が蓄積させると、ちょっとやそっと休んでも簡単に回復しない。ハサミと一緒。切れなくなるまで使い潰すより、切れ味を保てるよう小まめにメンテナンスする方が、最終的な能率はいいのだろう。

 しっかり体を休めて、仕切り直し。次の現場へ向かおう。