vol.114 屋根の威厳を取り戻す

 無事に棟が収まった。痩せた屋根はそのままに、その上に積み直していく棟の作業は困難も多かったが、屋根から降りて見上げた時、「ふむ、良くなったじゃないか。」と自分で思える瞬間は嬉しい。

 ひどく傷んでいたどこかを直すと、それまでマシに見えていた他のところがみすぼらしく見えてきてしまうのもよくあること。せっかく棟がきれいになったのなら、ここも直したい…という衝動にかられる。お施主さんも一緒である。ここも、ここも、ついでに直して下さい…とエンドレス。やれるだけやったところで、あとは本格的な修理の時に、と割り切る。

 屋根全体はかなり痩せてしまっている。しかしやはり棟が新しくなると、屋根としての締まりが出るというか、表情、威厳が感じられるようになる。曲がっていた背筋がピンと伸びたような。遠くない将来の葺き替えの時まで、きっと屋根をしっかり守ってくれる。