vol.96 感謝の気持ちとともに

 汗だく…ススだらけ…になりながら葺いた現場も、夏の終わりとともに完了した。よりによって一年で一番暑い時期を切り取ったかのような現場。文字通り熱かった約2ヶ月。ホッと胸を撫で下ろすとともに、急に訪れた秋の気配が何となく寂しくも感じられる。

 現場を終えて、とにかく心の中にあったのは、ひたすらに感謝の気持ち。

 選んで頂き、大切な屋根を触らせて頂いたお施主さん。期間中も茅降ろしやゴミ処理等、時には家族総出でお手伝いして頂いた。近寄るたび最後まで激しく吠えたワンちゃんたちも含め、もはや懐かしく感じる。

 そばを通りかかるたびに挨拶して下さり、きれいになりますねと笑いかけて下さったご近所の方。誉めてもらえる、喜んでもらえることは、いくつになっても嬉しい。

 茅や棟材他、材料を仕入れさせて頂いた業者さん。いつでも手伝いに行きますと言ってくれた方々。いろんな繋がりがあっての今があると改めて実感。

 詰め込んだ資材にもめげずに走ってくれた車。毎晩遅くなる帰りを待ってくれていた家族。当たり前かも知れないことも、その当たり前が幸せと改めて感じる。本当に感謝。

 最後に、いろいろと悩みながら、1人で茅刈りしたり道具を製作していた頃の自分。あそこで立ち止まらずによく前を向いた、と感謝。

 

 実るほど こうべを垂れる 稲穂かな・・・。まだまだ、実りの方は未熟者。けれど、こんなにたくさんの感謝に包まれて過ごせているのだと気付けたことは、一粒の実りだろうと思う。

 ここからまた気持ちを新たに、次の一粒を見つけに行こう。