屋根がいよいよ最後まで葺き終わると、今度はてっぺん"棟(むね)"の作業に取り掛かる。完成形ではトタンや杉皮に包まれていて見えないが、通常、棟の内部も同じように茅が積まれている。
それまでまっすぐ縦に葺いてきた茅だが、そのままでは終われない。所定の位置まで葺き上がったら、今度は茅を横向きに積んでいく。大きなカマボコ型に積んで、縄でくるみとめる。その上に中くらいのカマボコ型に茅を積み、また縄でとめる。またその上に小さく茅を積み、一番てっぺんには竹を据え付けると、断面が三角となる棟の頂点が出来上がる。この辺りは雨に濡れて腐っていくことは有り得ない(棟の内部に入ってしまう)ことから、葺き茅にふさわしくない悪い茅を、ここで消化してしまう。
雨で劣化していくことがないとはいえ、これから長年に渡って重たい棟を支える部分である。極力左右対称に、ムラなく積んでいかなくてはいけない。積み方次第で、やたら尖って見える棟にもなるし、やけにペシャンコな棟にもなってしまう。
今回の屋根は施工前、あと一押しで崩壊するのではないかというくらいに、棟が傾いてしまっていた。あんな風になってはいけない。しっかりと茅を積み、両面から挟み縫って三角型に固定する。どうか、20年後もこのまっすぐな角度のままでありますように。
ここからはしばし、茅の出番はない。杉皮、ウマノリ、ユキワリ…。いよいよ棟の部材の出番。屋根が一気に完成形に近づいていく。
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