vol.90 ウマノリ(馬乗り)の加工

 先日山で掘り倒したのが、茅葺き屋根のてっぺんを飾る”ユキワリ”。そのユキワリを載せる土台となるのが、“ウマノリ(馬乗り)”と呼ばれる部材である。

 屋根の上に、X型に組んだウマノリが据え置かれ、その上にユキワリが横たわる。ウマノリは主として、重たくて耐水性のある栗(クリ)の木が利用される。いわば屋根の棟を支える重要なおもしだ。

 

 X型に組んだ1対のウマノリが、屋根の棟にまたがるように配置されるから、馬乗り、なのだろう。建築用語的に言えば"千木(ちぎ)"だが、我々はウマノリと呼ぶことの方が多い。

 ヨーロッパの茅葺き視察に行った際、広葉樹の四ツ割りをX型に組んだものが棟にズラッと並んでいた。「あれを何と呼ぶ?」と尋ねたら、「Riding horse.」と教えてくれた。おぉ、見事に同じではないか!

 

 ウマノリの数は必ず奇数。5対、7対くらいが多い。多いほど大きな屋根となり見栄えは立派だが、ウマノリは何せ重たい。今回の屋根は5対で幸い。うだるような真夏の暑さの中で、ヘビー級の部材を屋根のてっぺんまで上げるのは気持ちまで重くなるのだ。