vol.85 杮(こけら)葺き

 梅雨空のもとで黙々と量産した片木(へぎ)。大変ありがたいことに、その片木を利用した屋根・・・『杮(こけら)葺き』を一緒にさせてもらえることになった。レアな体験に心が躍る。

 杉皮葺きは何度かやったことがあるが、杮葺きは初めて。しかし要領は似ている。並べて、とめて、一段ずつ上がっていく。杉皮も茅も瓦もトタンも、屋根の基本は皆一緒。下から上へ、断面が階段状になるようなイメージで上がっていく。

 違うのは、植物性素材の屋根は、物が不揃いであることだろう。厚い薄い、長い短い、胴張り先細り…など、材料の個性を見極めて、2手ほど先を見越して、葺き重ねていかねばならない。

 当然、使いやすい材料と、そうでない材料が出てくる。しかしここで良質なものばかり選んで使ってしまうと、後々残り物で困ることになるのは、茅葺きと一緒。量販店で安価に大量に手に入るような素材ではない。使いにくい材料もいかに上手に使うか、その心掛けが技術を伸ばし、はたまたお施主さんにかかる費用やこちらが得る利益にも関わってくる。

 

 茅のような植物素材で、豆腐を切ったような格式のある鋭角を作り出せるのは素晴らしい芸術。一方この杮葺きでは、板というものの組み合わせでありながら、曲線美が何とも言えず美しい。どうせ下からは見えない。そう分かっていても、曲線の角度や左右対称を気にして微調整を繰り返してしまうのは、職人の性だろう…。