以前杉皮葺きの要点を教えて頂いた師匠のところで、今回は杮葺きの材料の仕込みをさせて頂いた。
杮(こけら)葺きは、茅葺きや杉皮・檜皮葺きなどと同じく、植物性素材の屋根の一種。サワラやスギなどの針葉樹のごく薄い板を葺き重ねることで屋根を形成していくもの。
現在のように機械が発達していなかった昔、"板"というものは非常に貴重、高価なものだったらしい。確かに、ノコギリだけで大きな板を挽けと言われれば、今なら気が狂うような作業だろう。
そんなイメージばかりだった板だが、考えてみればごく薄い板ならば、丸太を刃物で割ることが出来れば簡単に作り出せる。だから古来よりの屋根材料のひとつになり得たのだろうか…などと思った。
薄く割って厚さを整えた板が"片木(へぎ)"。生産工程は単純だが、大量に作り出すには時間がかかる。たくさんあるようでも、屋根に使い始めればあっという間になくなってしまう。いつか不意に注文があった際に困らないよう、隙間時間に仕込んでおくのだそうだ。
文化財ともなれば話は別だが、一般民家で杮葺きを行なうことは、茅葺きよりも稀と言えるかも知れない。いずれ立ち会える機会があれば嬉しい。その日を楽しみに思いつつ、梅雨空を横目に、工場で延々と片木を作り続けた。
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