vol.79 土からの授かりもの

 地元の方が刈り取った茅の買い取りに伺った。情報と流通がしっかりとしている現代ながら、むしろ地元で茅を手に入れられることの方が貴重と言えるかも知れない。

 

 コロナウィルスの影響で、当初イメージしていたよりもはるかに、世界情勢は変わってしまった。身近なところに深刻な問題が迫ってくるのも、有り得ない話ではなくなった。

 人間が緊急事態にあえいでいる傍らで、月も桜も新緑も、いつも通りに美しい。そんな自然に畏敬の念を抱くとともに、何だかそら恐ろしい。自然界の変化に対して人間は脆いのに、人間界の緊急事態は自然界にとって朗報でさえあるのかも知れない…なんて考えも頭をよぎる。

 今は自分の生活を守ることしか出来ない。しかし、生活の価値観の見直しをするにはいい機会なのだろう。人間の当たり前の社会が崩壊すれば、お金などただの紙切れになる可能性もある。そうなれば、一次産業に従事してきた人の方が、変わりゆく世界にもまだ馴染んでいけるのかも知れない。

 

 もっと世界情勢が危うくなれば、茅屋根を葺いているどころではなくなるが、世界中の工場が止まっても、茅という屋根材料は変わらず生えてくるし、人力で刈り取れる。全ては無理だけれど、出来るだけ、少しずつでも、自然界のサイクルに逆らわない暮らし方が出来るといいと思う。