vol.75 春は花、冬は雪

 やっぱりこれがないと、と思った人は少なくないだろう。今更ながらのドカ雪。春の陽気と勘違いして動き出してしまっていた動植物、虫たちにはたまらないだろうけれど、何となくホッとした気持ちになる。雪国の冬には、やはり雪が必要なのだ。

 『かやぶきの里』で有名な北集落には、すごい数の観光客。イベントよりも、ただ"雪がある"ということの方が集客力が強いようだ。

 陽気で雪が溶け落ちてきた茅葺きの屋根を見ると、古い屋根には雪が残り、葺いて間もない新しい屋根は、見事に雪を落としている。新しく屋根面がフラットな状態の茅屋根は、水切れ(雪切れ?)がよいということが目視できる。

 観光客には雪化粧の茅葺きの方が見栄えがいいかも知れないが、あとあと、雪とともに屋根から落ちたコケや短い茅で軒下が大変だったりすることもある。雪がたまれば、痩せた屋根がえぐられて雨漏りしないかという不安もある。いかに観光客に人気でも、所有者は気楽なばかりではいられないだろう。

 

 それでもやはり、雪化粧の茅葺きは美しい。新しくても、朽ちかけても。陽射しの中でも、雪に包まれても。それぞれに絵になる表情を見せてくれる茅葺きは面白い。