vol.70 粗野に仕上げるのもプロの技

 竪穴式住居、1棟目が仕上がった。現在引き続き2棟目。行きつ戻りつ、初めて味わう失敗を繰り返した1棟目の反省を生かしつつ、年末の焦りも加わり、作業は高スピードになっていく。

 思いの外、苦労した。図面上では薄く葺くべしな屋根なのだが、素直に薄く葺いたら、骨組みの凹凸が激しすぎるせいで、箇所によって急に厚み0(ゼロ)cmという有り得ない状態に陥りそうになったり、それを回避しようと屋根の軌道を変えたら、気づけば所定の倍ほどの厚みになってしまったりと・・・。

 茅屋根はまっすぐ、もしくはむくり(かすかに盛った形)で葺くもの、という意識が染みつき過ぎているのだろう。こんな縄文屋根の場合、下地に従って薄く葺いた結果、でこぼこになりました、でも良かったのかも知れない。

 棟(屋根のてっぺん)を押さえる部材も、グネグネの雑木である。一般の人には“枝”と表現した方がイメージしやすいかも知れない。それをパズルのようにあれでもないこれでもないと取り替えながら適材適所に配置し、出来るだけ屋根にピシャっと沿うように仕上げた。後日見に来た現場監督に、「意外とまっすぐでしたね」と言われたが、そうじゃないのだ。下から見上げた時のみ、まっすぐに見えるようにトリックをしてあるのだ。それが職人技…と言いたいところだが、この現場に限っては、もはやただの癖に近い。

 丁寧に仕上げようとすればするほど素材に限界があり、アラが目立ってくる。

 

 3棟あるうちの1棟は、別の先輩職人さん達が担当されている。やや遅れて仕上がってきた棟を見ると、グネグネである。何とも素朴、そして粗野。だから見栄えが悪いかと言えば、その粗野な感じがいい、とさえ思えてしまう。全体が粗野だから、むしろ見栄え上の弱点がない。

 

 プロの職人だから、粗野と言われてもそうはいかんさ、と思っていた。というか、手が勝手に動いていた。

 しかしさらにベテランになると、粗野と言われれば、じゃあ粗野で、という割り切り方が出来るのかも知れない。ハードルを下げられているのに、その按配は難しい。いや、性格にもよるのかな…。

 さぁ困った。2棟目はどうする?職人技を光らせるか、粗野というものにチャレンジしてみるか。たぶん、なんだかんだ言って“粗野”には出来ひんのやろな…と思いつつ、叩き過ぎてほんの少しへこんだ屋根面を気になって引っ張り出している。だから粗野でいいんだってば…。

コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    ながのたかのり (月曜日, 09 12月 2019 19:33)

    奇麗すぎるなー。縄文人鋏持ってなかったのでは。

  • #2

    ぶんな (火曜日, 10 12月 2019 19:39)

    いや、オーパーツで出土するかも…(笑)。
    以前やった縄文系は階段状に茅を葺く“段葺き”でしたが、あっちの方が刈り込みいらずで粗野感はありましたね。