vol.66 竪穴式住居

 これからまたしばらく出張生活。早めに済ませたいところだが、今回の屋根はなかなか手強そう。

 いわゆる竪穴式住居。普段は高い足場を組んで初めて屋根と向き合うのに、これは地面から屋根が生えている。不思議な感覚だ。そして、古代の再現建築だから当たり前なのだが、形がいびつ、凸凹だらけ、それでいてかなり無理な意匠をこらした造り。とてもやりにくい。

 それでも何とかして美しく仕上げるのが職人たる者の仕事。普段ならそういうところなのだが、古代の建築物なのだから、ある程度粗野な感じを残した雰囲気で…という注文。

 これが意外と難しい。直線や曲線を美しく、茅は縦に水切れよく、どこから見ても左右対称になるように…と意識することが癖になっていて、体が反射的にそういう屋根を作ってしまう。わざとおかしな箇所を残そうものなら、そこが気になって仕方がない。

 ここまで骨組みが凸凹だと、きれいに仕上げようと思っても、勝手にいびつな屋根に出来上がるのかも知れない。あれこれ考えるより、やってみるしかない。開き直れば、たまにはこんな屋根も楽しい。