vol.64 差し茅

 茅葺き屋根の修理にはいくつか方法がある。今回の工法は、全て葺き替えるのに比べて耐久年数は低いが、その代わり少ない茅の量で施工出来る一般的な方法、“差し茅(さしがや)”である。

 腐って痩せてしまった屋根の茅を、所定の厚みに戻るまで引っ張り出す。そして腐って土化している部分をそぎ落とす。

 引っ張って抜き出した分、茅はゆるゆる、スカスカになる。そこにボリュームを持たせ固め直す意味で、切って短くした新しい茅を差し入れる。なじませ、叩いて凹凸を均すと、ボロボロだった屋根がまたきれいに生まれ変わるのだ。

 

 大抵の場合、色がくすんだ古い茅と、新しく差し込んだ新しい茅が、わりとはっきりとしたマーブル模様を描くことになる。

 しかし何となく今回は違和感がある。全て葺き替えたかのように、全体の色が馴染んでいる。なぜだろう、と少し考えて、すぐ合点がいった。

 ここのお家は、毎年茅刈りをしている。そして、刈りためた茅で職人に屋根の修理を依頼している。このお家で何十年にも渡って繰り返されてきた営み。

 20年近く前に葺き替えたというその時の茅も、今回差し茅に使っている茅も、同じ人が同じ場所で刈り取った茅なのだ。色味や質感が似ていて当然。だからマーブル模様にならず、統一された色合いを醸し出したのではなかろうか。

 

 やがて朽ちていよいよ土に還った茅は、次の茅を育てる栄養となり、再び育ち、刈り取られ、長い年月を経て屋根へと戻る。茅葺きが紡ぐ連綿とした歴史は不思議で奥が深い。