vol.60 補強と先読みの工夫

 

 気が重かった下地修理も、完了すればやはり気持ちがいい。重たい茅屋根を預ける信頼に足る、丈夫な下地に生まれ変わった。

 下地直しは面倒な作業ではあるが、同時に、自分にとって屋根を葺きやすい条件を作り出すチャンスともなる。途中で気がついたが、今回は屋根裏の構造上、当面“針受け”が出来ない。

 針受けが出来ない(屋根裏に人が回れない)以上、表側から何とかするしかない。一番単純な手段は、葺いた茅の中に強引に手を突っ込み、直接屋根裏の下地に縄を回す、いわゆる”手針(てばり)”という方法である。しかしこれは下手すると腕が傷だらけになる上、労力的にもきつい。狙った場所にちょうどいい下地がない時など、ましてや真夏の炎天下では発狂しそうになる。手針する時に困らないようにはどうしたらよいか、なるべく考えて下地を組んでおく。

 茅を葺く前なら、当然下地が見えている。角の縄などは、茅を葺く前に予め一通り出しておくという手もある。が、これも葺き上がっていくうちに想定とずれてくる可能性がある。やはり、欲しい位置で縄が取れるように、間違いない下地を設置しておくのが大切。

 

 茅葺き職人といえど、茅を葺くだけがスキルではない。木工事に近いこれらの作業も、茅屋根の寿命に関係してくる。さっさと茅をつけていきたい気持ちを抑え、安定した土台作りを心掛けたい。