vol.43 あさぼしよぼし

 来る日も来る日も気が狂ったように茅を葺き、早や3月末。さすがに体がギシギシだが、おかげで完成が見えてきた。

 夜になったら数か所から照明を灯して、その中で作業する毎日。安全第一なので出来る作業は限られるものの、星空や夜桜(正確には梅)を眺めながら体を動かす時間は、何だか不思議なひとときだった。作業を終えて足場から降りると、ライトアップされた茅葺きを見上げることになる。早く、完成形の本番ライトアップを見てみたい。

 

 数日前から、茅クズを引き取りに地元のおじいさんが軽トラで往復していらした。畑等にまくのであろう。大きく3つあった茅クズの山は、気がついたらきれいになくなっていた。

 行政が関わる大きな文化財などなら、数十万円にのぼる処理費をかけて、産廃としてコンテナからゴミ処理場へ運ばれる茅クズである。そんなことをせず、喜んでもらってくれる人がいて、それを認める地域性がある。これはありがたく、残していきたいことだと思う。

 

 いよいよ仕上げの刈り込み作業に突入。今から発生する茅クズは細かく、田畑にまくにもオススメだ。足掛け半年間に及んだ出張生活も、あと少し。そのことをニンジンとして心にぶら下げ、最後の気力体力を振り絞る。