茅屋根の解体が始まった。下から丸太を担いで上がったのと違って、茅ゴミ処理の場所は敷地内なので助かる。
茅葺きの廃材は、9割方自然素材である。古茅はもちろん、竹材、木材、わら縄…等々。全て土に還るし、焚火で暖をとりがてらに処分することも出来る。
空き家になって長年経ち、穴が開くほどボロボロになっていく茅葺き屋根をたまに見掛けると、職人として切ないものがある。
しかしそうして傷んだ茅葺きが、とことん腐って土や周囲の森と同化し始めると、逆に茅葺きの偉大さというか、神聖さのようなものを感じる。現代日本において、放っておいたら全て土に還るという家屋はなかなかない。
今回の現場の茅クズは、地元で処理して下さるらしい。田畑のマルチや肥料代わりに欲しい人がいるかも知れないとのこと。
山野や田畑で土に還った古茅が、やがて新たなススキや稲わらを育み、いつの日か再び茅屋根に戻る。たった20年ほどで朽ちていく茅葺きが、ひそかに紡いでいる永遠のサイクル。便利と引き換えに自然のサイクルから逸脱した鉄筋コンクリートや原発には、真似できまい。
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