vol.33 ハサミの修復 柄の付け替え

 職人は道具が命。そして、茅葺きの道具は市販品では賄え切れない。自分の道具のメンテナンスを怠れば、死活問題と成り得る。ゆえに、道具の手入れや修繕には、常に気を遣わなければならない。

 

 …と偉そうに述べては見たものの、なおざりになりがちなのが正直なところである。

 

 現在4丁のハサミを持っている。

 1.茅を切ったりなど、普段使い用の直(ちょく)バサミ

 2.屋根面を刈り込んで仕上げる際に使う、大型の反りバサミ

 3.軒刈りに使う、小型の反りバサミ

 4.軒刈りに使う、仕上げ用の直バサミ

 

 1と4は、全く同じハサミ。荒っぽい使用の普段使い用と、精密な仕上げ用、という住み分けである。

 ハサミそのものは当然鍛冶屋さんの作品。それに自分好みの柄を取り付けるところからが、職人の個性の光るところ。

 柄を取り付ける。それだけなのに、なかなか奥深いのだ。

 

 ・何の木を柄の素材に使うか……耐久性や重さに関係

 ・丸い材か、扁平な材か、枝など自然木の形か……持ちやすさ

 ・どのくらいの長さの柄にするか……用途、使いやすさ

 ・ハサミに対して柄を取り付ける角度……用途及び流派による

 

などなど。

 昨年、4のハサミの柄にヒビが入り、補修はしてみたものの、明確に力が逃げている感覚があった。そのうち直すつもりで、軒刈りには3のハサミを使い続けていた。そして、概ね1年経ってしまった。

 いい加減に直さねばならない。必要というより、精神的な問題である。職人が壊れた道具を放置したままというのは、縁起が悪いというか、何となくいい気分がしない。

 

 何事も実験。今回の4のハサミについては、以下の仕様で再生予定。

 ・樫(かし)を素材に柄を作る……前回の椎(しい)より頑丈、高価、重い

 ・扁平な材……何となくこの方が好み

 ・長さは2尺(約60㎝)……他のハサミと一緒。定規代わりにもなる

 ・角度……閉じた時、手と手が当たらない程度に狭め

 

 ようやく重い腰を上げての、ハサミの再生作業。どうせやるなら、珠玉の一品に仕立て上げたい。

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コメント: 2
  • #1

    ホッケアジ (金曜日, 13 3月 2020 22:50)

    ヒビの入った4のハサミ。一年間使えなかったのに仕事ができたということでしょうか?
    ならば、4のハサミは必要ないのでは?

  • #2

    ぶんな (月曜日, 23 3月 2020 12:35)

    3のハサミがあれば大抵の軒は切れるのですが、軒の厚みや高さ等の関係で、4のハサミの方が適している場面がしばしばあるのです。