vol.31 素屋根(すやね)

 年明け本格的に取り掛かる現場もまた出張。家族と離れる出張生活は出来れば避けたいが、あいにく地元は雪景色。出稼ぎシーズンとなるのも致し方ない。

 こたびの現場には"素屋根(すやね)"がある。重要文化財や大きな公共工事でもなければお目にかかることもあまりないが、要するに、工事現場全体が風雨にさらされないよう、建物の上にさらに屋根が仮設されているということである。

 素屋根がある、ない、という問題は、屋根屋にとって非常に大きな意味を持つ。もちろん、あった方がいいに決まっている。が、現場の予算などといった難しい問題もある。今回は当たりを引いた、と思った方がいい。

 素屋根があると何がいいのか…。

 まず、雨の日でも仕事が出来る。作業をどんどん進めるのに都合がいいし、定期的な休日も設けやすい。

 次に、屋根の養生(ようじょう)をしなくて済む。養生とは、職人が留守をする雨の日や夜の間など、雨漏りしないよう屋根を大きなシートで覆っておくこと。1日の始まりにこれをめくり、1日の終わりに再び覆い直す。これが時間的、労力的に非常に手間なのである。これを省くことが出来る。

 さらに、雨や養生の心配がないため、どんな中途半端な作業段階でも、途中でストップすることが出来る。普段ならば、"キリのいいところまでやったら帰りましょう"と呼び掛けるところだが、素屋根があればいつでも帰れるのだ。

 

 もっとも、素屋根の構造物が邪魔で、材料の茅が収納しにくい、狭くて歩きにくい、などの弊害もある。また、出来上がってきた屋根の全景が見えにくいという欠点もある。作業段取りに職人の工夫が求められる点においては、結局のところいつもと同じなのだ。