vol.27 尾師(おし)、の仕事

 茅葺きは角(かど)が難しい。どう難しいのか一言で説明するのは困難だが、重要かつ難易度が高く、かつ見栄えに大きく反映される部分である。それゆえ大抵、その現場においてのベテラン職人が受け持つ。全国用語かは分からないが、角を受け持つ職人を"尾師(おし)"と呼ぶらしい。

 "真ん中並べ"の作業も簡単ではないが、多少の乱れは目立たず、またすぐに修正がきく。しかし角は1面につき2筋しかない故、凹凸があったり軌道が狂っていたりすればかなり目立つ。そして真ん中並べは角を定規として進んでいくため、角がおかしければ、全てがおかしなことになる。

 

 "もう角を任されているか?"…同期や同世代の若手職人同士には、互いに気になるところだ。

 忘れもしない。自分が初めて角を触らせてもらった現場では、ほぼ9割、親方にめくられてやり直しとなった。自分がやり直したのではなく、説教を食らいながら、親方が付け直すのを見ていた。

 残りの1割は、角をつけた直後に所用で早引けさせてもらった日だ。あれもあの後めくられていたとしたら、初挑戦の角は完全不合格だったことになる。

 正直、今でもド素人のような失敗をしてしまう時がある。親方が見ていなくてよかったと心の中で苦笑いしながら、そそくさと手直しをする。

 

 現在、現場は仕上げ作業の最中。「角は豆腐を切ったようにスパッときれいに見せなあかん。」これも親方から口酸っぱく言われてきたこと。刈り込みの問題ではない。そもそも上手に茅をしならせてしっかり固まった角が葺けていなければ、どんなに切れ味のよい刃物で刈り込んでも、バサバサに散って豆腐を切ったようにはならない。また、すぐに腐って角が丸く溶け落ちてしまう。

 

 今の自分の角レベルがどの程度か?本当の結果が出るのは数年或いは十数年後。だから日々追求してみるしかない。