
ついに棟が上がった。葺き替え作業の間、一時停止していた屋根の生命活動を、いざ再稼働させるかのように感じるこの瞬間。杉皮をかぶせ、太い半割りの竹で押さえ、てっぺんに極太の根付き竹を鎮座させる。生まれ変わったこの屋根に、新たな個性を与える瞬間のようにも感じる。
丸い竹を屋根のてっぺんに安定させるには、竹の腹側をV字に削りとって、ピタリと屋根のてっぺんにはめなければならない。しかし、茅で作る屋根は木材を加工したように正確に真っすぐではない。そして、載せる竹もどうしても多少曲がっている。
屋根の反り具合…、竹の曲がり具合…、見せたい完成形のイメージ…。
全てを考慮して、取り換えのきかない根付き竹をV字にカットする。祈るような気持ちである。どうか、無事に収まってくれと。手が震えそうになる。
幸いにして、ほぼ一発で収めることが出来た。ホッとするとともに、ドッと力が抜ける。
私が眺めて試行錯誤している間、重たい竹を黙って支えていてくれた仲間たちに感謝。地元で少しでも収まりやすい竹を選んで掘ってくれた後輩たちに感謝。
ところで、なぜ"根付き竹"なのか。
端が反り上がった竹を棟に使うことはしばしばある。しかし、根付きではない。それで充分、格好良く収まるのだが。
個人的な感想を言えば、根付き竹は美しいとか格好良いとか、そういった評価はし難い。悲しいかな現場内でも、ちょんまげみたい…という意見が大半である。
ヒゲ根が円形に広がった竹の根は、何かを象徴しているのだろうか?
広がる、根付く、といったゲンかつぎか?
はたまた、他所とは違うものにしよう…という、お施主さんもしくは職人の工夫から広まったものか?
どなたかご存知の方がいれば、ぜひ教えて頂ければ幸いです。
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