vol.23 雨の日の内職

 恐れていた雨続き。ハッキリしない天気が続くのは出張中一番つらい。長雨と決定すれば自宅にも帰れるが、結果的に晴れの連休となってしまえば、現場運営的には大打撃になってしまう。悩ましいところ。

 

 事務仕事を済ませて余った時間は、現場から持ち帰った道具の加工に費やした。

 茅葺き職人の道具は、その多くが職人それぞれの手作り品。市販していないから仕方がない。10人職人がいれば、同じテーマの道具でも、十通りの作品が出来上がる。材質、形状、使い勝手、皆それぞれである。この業界の面白さのひとつ。

 

 今回手を加えたのは、道具と言ってもただの竹グシ。割った竹の先を尖らせらもの。各職人が似たようなものを使っているので、火で炙って焦げ色に仕上げ、油を染み込ませて磨き直した。これで、他の職人のものと見分けがつきやすく、かつ防虫・防カビの効果が期待出来る(のではないか、と思っている。)

 何より、使い込んできた頃に竹の針先が見せる、鏡のように黒光りする色艶が最高に美しいのだ。

 太い竹さえあれば、2~3分で作れるアイテムである。だから、機能美には重きを置いていない。ただ、手作りの道具である故、例え自己満足であっても、愛着を持ちたい。

 

 見習いの頃から少しずつ自分の道具を揃えたが、その多くが現在は2代目。破損したり、改善の余地を見い出して作り直したり。ぼちぼち直さねばならない道具もチラホラ。雨で現場が進められなくとも、やるべきことは多い。