vol.17 手元(てもと)の仕事

 茅葺きは1人でも完成させられないことはないが、当然手間がかかる。茅葺き業界に限らず、職人に対し、その諸々の補助をする立場の仕事師を"手元(てもと)"と呼ぶ。(てったい(手伝い?)などとも)

 屋根上でひたすら茅を並べる職人に対し、手元は茅を屋根面へと運び、必要な大きさに刻み、暇があればどんどん溜まっていく茅クズを掃除する。職人が茅を並べ終われば、針受け(茅を糸と針で縫う作業)の対応のために屋根裏に入り、さらに次に職人が必要とする資材の準備にかかる。

 職人の技術が大事なのは言うまでもないが、職人が作業に集中するためには、手元の活躍が不可欠。職人本人が、数メートルの高さの屋根を自分で登ったり降りたりしていては、能率が極めて悪い。体力も奪われる。慣れた手元なら、職人が次の段階で何を要求してくるか予想し、前もって準備しておく。

 もっとも職人のほとんどは、手元からスタートする。入職してから1~2年の間、ひたすら茅を届け、針受けに入り、足場を設営する。そうこうしている期間に、職人がどんな場面でどんな茅を必要としているのか等の情報を吸収出来るかどうかが、その後の職人への道への重要なステップとなる。