vol.167 漆黒の屋根裏

 囲炉裏で当たり前に煙を上げていた頃は、茅葺き屋根のもちが今より良かったとよく聞く。それゆえ、日常生活に必要なわけではなくても、なるべく今でも煙を上げるようにしているというお家はしばしばある。

 茅葺きを少しでも長持ちさせたい、というのはお施主さんの当然の願いであり、そのために可能性のあることは何でもしてみるというのは良いことだと思う。

 しかし、茅葺き屋根屋にとって、真っ黒に煤けた屋根はなかなか手強い。顔も体も、服にも車内にも、黒い煤の細かい粒子が浸透する。そして本格的な茅葺き作業が始まれば、茅を縫い締めるために屋根も激しく振動する。そのたびに、屋内にも梁などに積もっていた煤がさらさらと落ちていく。その掃除もなかなかに大変だ。

 そもそも、そうでなくとも茅葺き工事というものは掃除が厄介。茅を右から左へ移動するだけでもかなりのゴミが散る。最終的に自然に還るところは素晴らしいが、だからと言って掃除しなくていいわけではないのだ。

 

 当分、煤だか日焼けだか分からない黒さで帰宅する日々が続く。覚悟を決めねば。