vol.68 縄文の仕事

 竪穴式住居も難所に差し掛かり、行きつ戻りつの進行具合。慣れていればどうということのない屋根かも知れないが、やはり初体験の屋根は直面する問題も初体験。とても勉強にはなるが、作業的にはなかなか大変である。

 自然に葺けば、この屋根は周囲も棟(てっぺん)も、丸みを帯びた柔らかい感じの屋根になるはず。しかし今回は、棟をなるべくまっすぐ仕上げて欲しいとの要望。仮に上空から見たとしたら、円形から四角形になって屋根が終わる。いわば逆スカイツリーなデザインである。

 そういうことが出来ないわけではない。だが、そもそも骨組みも曲がりくねった雑木であるため、どうにも想定通りにいかない。

 茅を葺いてからでないと、答えが分からない。だから、考えても無駄。まず手を動かすしかない。結局原点回帰である。

 

 通りすがる人の反応も様々だ。感心していく人、スマホで写真を撮っていく人、長時間黙って眺めていく人。

 「ずいぶん丁寧に時間かけてやるんだね~。縄文人は道具もなしで生活のためにパパっとやっただろうけどね。」・・・ちょっとした皮肉も言われた。

 そうかも知れないが、そうでもないかも知れない。昔だって家作りのリーダーみたいな人はそれなりにおって、木か石か骨などで出来たお気に入りの道具も何かしらあって、いい家が出来たと言われれば喜んで、クレームがつけばしょんぼりもしたんじゃなかろうか。縄文人だから、サル+αくらいの頭脳で草を重ねて、とりあえずの屋根らしきもので雨をしのいでいた・・・そんなイメージは、縄文人へのある種の偏見かも知れない。

 

 間もなく作業は棟に取り掛かる。最後の難所だが、それを乗り越えれば仕上げに取り掛かれる。武骨な感じにとりあえず葺き上がってきた屋根を、刈り込んで成形し、この屋根が持つ本当の美しい部分を早くお披露目したい。

 あ、粗野な方がいいんだっけか?そもそも縄文屋根にハサミをかけるのはアウトか?

 知ったこっちゃない。ダメと言われるんでなければ、やはり職人として美しく仕上げたいのは当たり前。屋根と対話しながら決めるとしよう。