vol.55 モスグリーン色の屋根

 次なる現場は、屋根の痛みのひどい箇所を直していく修繕。4面のうち2面は、全体的にひどくコケに覆われている。このままだと雨水を溜めてしまいやすく、どんどん屋根が腐って土と化していく。コケをそぎ落とした上で、コケの下で傷んでいた屋根を直していく。

 

 コケは、茅屋根にとって好ましい存在ではない。屋根の劣化を加速させていく原因となる。しかしながら、茅葺きは植物屋根である以上、年老いてくればどうしてもコケに覆われてくる。

 このコケに覆われた姿に、茅葺きらしさというか、好ましさを感じる人もいる。茅葺きの持つ魅力のひとつとして、年数がたつごとに表情を変えていくというものがある。苔むした屋根は、その屋根が長くその家を守り、周囲の自然と同化してきたかのような姿でもあるのだ。

 

 コケをそぎ落としてみると、ずいぶんと土化しており、軒など半分程度なくなってしまった。正直、葺き替えてしまった方が早いくらいなのだが…。手強い修繕になりそうだ。