vol.51 カラス

 ITS美山会場で展示されていた茅葺き道具の中で、特に海外の職人の興味を引いていた道具がこれ。その名も『カラス』。黒い嘴状の形からきた名称だろうか。日本の多くの職人が愛用していると思われる、とても便利なアイテム。

 

 茅葺き屋根工事の際、しばしば茅を引っ張り出す必要に迫られる。しっかり葺いてある屋根の茅は、両手でつかんで引っ張ってもなかなか抜けてこない時がある。また、無理やり手で掴みだそうとすると、周囲が荒れてしまうことがある。

 そんな時にこのカラスが重宝される。嘴部分で茅を掴み、その部分だけをガッチリと掴んで引っ張り出す。

 

 海外でも、屋根の修繕方法は同じようなものらしい。表面が腐って土化してきた屋根を修理する際、古い茅を引っ張り出し、腐った部分をそぎ落とす必要がある。

 これはどこで購入出来るんだ?と尋ねられるくらい、海外の方にも称賛された。

 

 多少やり方の違いはあれども、不思議と日本も海外も、茅葺きで使用する道具は似通っている。それだけに、自国で使われていない目からウロコの道具を目にすると、これは…!という気持ちになるのは大いに分かる。道具は職人の腕の延長。仕事の能率に大いに影響してくる。

 

 茅葺き職人の道具は市販されていない故、基本的に各々の職人の手作り。だから、見慣れない道具を目にすることはいい刺激になる。

 そろそろなんか作りたいな…。小学生のような工作欲が、仕事の合間合間にいつも頭をよぎるのである。