vol.41 鎌を粗末にしてはいけない

 連日の不安定な天気。インスタント素屋根を設営してだましだまし作業を続けているが、やはり能率が悪い。カラッとした晴天が待ち遠しい。

 脆弱下地を補強しながら再設置の毎日。わら縄をギチギチに締める作業を毎日し続けたせいで、手の皮がむけ始め、掌の痛みと痺れがハッキリしてきた。そろそろきつい。さっさと茅を葺く作業まで辿り着きたい…。

 

 縄を切ったり部材をはつったりしている最中、鎌の刃がはずれ飛んだ。壊れたのはこれが初めてではない。この業界に入って最初にホームセンターで購入して以来、8年間毎日のように使い続けてきた鎌。曲がったり、ヒビが入ったり、刃がとれたりするたびに、応急処置を繰り返して使ってきた。

 

 師匠の教えによれば、我々茅葺き職人にとって、鎌は仕事の象徴なのだそうだ。逆に言えば、鎌をダメにする=仕事を失う、ということ。だから、鎌の破損はすぐに対処すべし、と教えられた。

 "おしらせ"とか"おしるし"とか言うらしいが、分かりやすく表現すれば、"神のお告げ"みたいなものの一種らしい。いくつか教わった。

 

 正直、スピリチュアルなことにあまり興味はない。が、壊れた鎌を放っておいてどうなるか、試そうという気分になるわけもない。何より、量販店の品であろうが、苦楽をともにした愛用の道具を、粗末に扱う気もない。応急処置の繰り返しでもはや全体がガタガタであるが、もう少し頑張ってもらうため、雨で作業がストップした間に補修をした。

 逆の逆に言えば、今まで仕事を平穏無事に続けてこられたのは、この鎌を自分なりに大事に扱ってきたからかも知れない。そう思うことにしようと、満身創痍の鎌を見つめながら思った。