vol.40 手術開始・・・という気分

 今回の現場の第二関門。それは下見に来た時から悩ましく思っていた、脆弱な下地(骨組み)。

 大部分が竹で構成されている。木もいくらか混じっているが、竹よりも細いものばかり。

 縦も横も竹ばかりだと、下地同士の摩擦が少なく、滑る。つまり長い年月の間に、茅屋根の重さに負けてずり落ちてくる。実際、大きくたわんでしまっていた。

 そして、良くも悪くも本当に天然素材ばかり。クギやかすがいなどが一切使われていない。それで成り立てば素晴らしいことだが、現にずれてしまっている。竹を多用するなら、それなりの対策をせねばならない。

 使われた竹の旬が悪かったのだろうか、手で握り潰せるくらいにスカスカになっていた。この上によく茅がのっていたと思う。

 シンプルな構造ゆえ、経年の重さに耐えかねたか、どう見ても屋根が傾いている。ここに新たな重たい屋根を葺いていくのは怖い。何事もなかったとしても、せっかく新しく葺き替えるのに、左右非対称に傾いた屋根が出来上がってしまうのは気に食わない。

 屋根が傾いて重心がかかった方の桁が、角のところで折れてしまっている。目をつぶってもいい程度だが、万一工事中に完全に折れてしまったら、一からやり直しになる。

 

 仕方ない。骨組みをロープで引っ張って傾きを矯正、そのスキに構造材を再固定していく。折れて垂れ下がっている角の桁も一度無理やり元の形に戻し、そのスキにあて木をして補強した。

 肝心かなめの部材は、撤去して竹から丸太に取り換え。苦労して階段で運んだ丸太が、下地に消えることになろうとは…。

 

 気持ちは相変わらず、どんどん先へ進めたい。しかし、今日も我慢。まずはしっかりした土台作りから。