vol.11 期間限定のおしゃれポイント

 棟も無事に収まり、ここからは各屋根面の仕上げ段階。土地内の杉の枝を少しばかり採取させて頂き、今日はちょっとしたおしゃれポイントの施工。

 破風(はふ)という三角形の板の下は、経年とともに茅が抜け落ちてきやすい箇所で、修繕のためこの部分だけ直しに行く現場もしばしば。どうやったら何年経っても抜けないようになるか、そもそもどうしてこの部分の材料はすぐ抜けてくるのか…考えることは多く、工夫を求められる。

 茅の葺き止まり後、茅を押さえている竹を隠す垂直の段『品軒(しなのき)』を作る。稲わらが材料に用いられることが多いが、今回は土地内にたくさんあった杉の枝葉を使用させて頂いた。

 破風の下にパンパンに葺き込んだ茅の上に、さらに杉の枝葉をギチギチに詰め込む。大量の杉葉がものすごいボリュームになり、緑色のマンモスが横たわっているかのような状態になる。それを屋根バサミでカットしていくと、最終的には抹茶羊羹のように角のついた、美しい緑の品軒が出来上がる。

 時間とともにへたっていく稲わらと違い、杉の枝は乾燥して固まっていく。出来得る限りの最善策であり、何より、全体が茶褐色系の茅葺き屋根の中にあって、この部分だけの緑色が美しい。

 もっとも、この鮮やかな緑色は今だけ。日数が経つにつれ、乾燥して今度は茶色になっていく。その変化もまた、お施主さんに楽しんでもらいたい。