vol.8 雨天との駆け引き

 屋根葺きの仕事は、通常は雨天では出来ない。それゆえ、雨でない限りは極力現場の作業を進めたいのが心情。

 雨かと思って慌てて屋根にシートをかければ、間もなく晴れて結局通り雨。やれやれとシートをめくれば、今度は本降り…。現場棟梁を務める者は、現場状況と天気の見極めに忙しい。

 休憩中、明日の予定を考える。天気予報アプリによれば、明日は雨らしい。けれど、山間部の天気予報はハズレも多い。今の現場の職長を務めている後輩がどういう判断を下すか……と待っていると。

 「あの雲はダメっすね。明日はアカンな。」

 観天望気。結果はどうなるにせよ、いい決断材料であると思う。どれだけ便利なツールがあろうとも、昔から伝わる知恵はあなどれない。この現場はゲリラ豪雨に再々やられたが、お施主さんも、西の空が怪しくなったら注意、とおっしゃっていた。

 雨なら雨なりの仕事がある。現場も間もなく棟上げの段階。明日は棟の材料の仕込みになりそう。